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2017年2月18日 (土)

KIMhouse

以前書いてボツになった原稿をUP。
陽の目を見ないのはかわいそうなので・・・(苦笑)

物件は岸和郎さんのデビュー作「 KIMhouse」 について。
岸さんの作品の中でもっともすきな建築です。

http://www.k-associates.com/ja/works/c0/8/KIM+HOUSE/



設問(34字*6行+2*6=12文字)

問:(図1)は、鉄骨ラーメン構造によるある都市住宅の立面図である。一般的に鉄骨ラーメン構造は、現場での溶接を避け、ウエブとフランジを高力ボルトで結合する剛接合(図2)によって建築される。この住宅の短辺方向は(図1)のように、H型鋼の構造体が道路面や中庭に現れている。しかし、剛接合が見当たらない。もちろん現場溶接もしてない。なぜ、ボルトによる剛接合や現場接合を行うことなく鉄骨ラーメン構造が成立しているのか。鉄骨造の構法から考えてみよう。

DATA
KIM HOUSE 設計者:岸和郎  所在地:日本・大阪市  建設年:1987年

解説
 間口が狭く、奥行きのある大阪の町屋に挿入された岸和郎のデビュー作。安藤忠雄の住吉の長屋(1976年)とほぼ同じ中庭形式をもつ。しかし、住吉の長屋より一回り小さく、鉄筋コンクリート造ではなく鉄骨造であり、ファサードや内部のレイアウトも若干異なる。何よりも、鉄骨造の基本を追求していることがいちばんの特徴だ。

運搬を考えてつくる
 鉄骨造は、精度と品質を保つためファブと呼ばれる鉄骨工場内で、H型鋼や箱形鋼管を加工する。それらをトラックに乗せ、現場に搬入し、クレーンで建て方を行う。運搬できる大きさに部材を分けて制作する。それが鉄骨造の基本だ。現場までの道路状況を考えると、一部材あたり2.8M×2.8M×10M以下とするのが理想的だ。 
 鉄骨材は認定工場で完全溶込溶接を行えば、母材と同等の耐力をもち、ひとつの連続材として扱える。とはいっても、溶接は風や温度の影響を受けすく、熟練の溶接技術者が下向きの姿勢で溶接を行わないと充分な性能が得られない。だから、現場での溶接をさけるのが、鉄骨造の基本となる。
 そこで、現場では溶接の代わりに高力ボルトによって摩擦接合を用いる。H型鋼のウエブとフランジの両方を接合するものを剛接合と言い、軸・剪断・曲げの全ての力を伝達可能だ。分けて運ばれた材が、ひとつの連続する材として扱えるようになる。一方、ウエブのみを接合するものをピン接合といい、曲げを負担できず、軸・剪断力のみを伝達する材となる。

ラーメン構造とブレース構造
 ラーメン構造とはそもそも、一つの部材を門型に連続させることによって、地震や風の水平力に抵抗しようというものだ。全ての部材をひとつに、ファブで全ての部材を1つになるよう溶接するか、運搬を考えボルトによる剛接合にしなければならない。一般的に梁の端から0.5Mの場所に、フランジとウエブを高力ボルトで接合する剛接合箇所が設けられている。
 一方、ブレース構造は、フレームに引張りを負担する斜材を設けることで水平力に抵抗しようというものだ。だから、ラーメン構造のように部材が連続している必要はなく、梁と梁の端部は軸力と剪断力を伝えれば良い。よって柱と梁の接合部はウエブのみをボルト接合とするピン接合となる。

KIM HOUSEの構造は?
 KIM HOUSEの短辺方向スパンはたった2.58M、高さも5.62M。ひとつのフレームがトラックで運搬可能なのだ。よって、H型鋼の梁に高力ボルトによる剛接合が見られない。
 さらに、通常であれば門型にするフレームを、鉄骨フレームの安定と、基礎梁の補強を兼ねて「日」型とし、最下部を基礎梁と一体化させている。結果、基礎の梁せいが低くなり、近隣配慮の必要な深い根切りも不要となった。
 また、「日」型フレームを結ぶ長辺方向は、ブレース構造だ。H型鋼を柱で使用した場合、弱軸方向となる長辺方向に曲げを負担させることは難しいからだ。ブレース構造であるなら、材が連続している必要はない。柱との接合部は梁が負担する荷重を剪断によって伝えるだけであるから、フランジ部分のボルト接合は必要ない。梁の上下にボルトやプレートが露出しないため、梁がとてもすっきりとして見える。
 一般的にブレース構造にすると、ブレースが邪魔になるので開口を設けにくい。KIM HOUSEは隣家が迫っているため、長辺方向には開口を設ける必要がない。ラーメン構造である短辺方向にはブレースがないので入り口や窓などの開口部が設けられている。周辺環境を読みこみ構法と計画の一致する回答をだしている。

オリジナリティ
 KIM HOUSEは1日で構造体をくみ上げ、金属折板屋根を載せる。側は内外壁兼用の押出セメント版をボルトで締結。短期間かつ簡易に施工が完了する。乾式工法によるローコスト住宅だ。
 これは岸が大学院時代に研究していたケース・スタディ・ハウス(1945—66:アメリカ)に通じる取り組みである。だが、現場溶接を行わないよう構法が工夫され、住吉の長屋と似た形式をもちつつ、素材や建具の開放性によって、オリジナリティを獲得している。
 竣工から25年の時が経た2012年、岸の手によって改修が行われた。中庭や室内境界の位置が変更され、木格子や内壁、断熱材が挿入されたことにより、ハイグレードな雰囲気をまとう住まいとなった。

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