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2013年5月28日 (火)

宇都宮建築巡り&天内さんレクチャ

今週も1日だけ仕事を忘れインプット。天内さんのレクチャにからめ宇都宮の建築を巡る。同行は毒島設計室の毒島くんほか、1+α。

毒島くんの新作、宇都宮大峰キャンパスの倉庫を見て。小さいのに良くやっている。本人が好きなライト、というよりよりさらに日本的な遠藤新、さらにそれを渋くしたというか。ライトにあこがれ内井昭蔵事務所の門をたたいたのが良く解る。

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宝積寺駅舎、ちょっ蔵広場、それとステンレスワイヤーフレームによるオブジェ。

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作品云々はおいておいて、最近思うこと。東大のメインストリームを生きる建築家は、従来の考え方を超える、否定する、否定していたものを肯定することで、新しい価値の創造を行なうことに重きを置いてきたように思う。作品をつくり、論文をしたため、メディアを利用し、知らしめる形で。フェイクと本物、表層と構造を並列に、そして等価に扱う隈研吾氏。機能主義を超え、原っぱ的建築を唱え、造形を肯定する青木淳氏。永遠の建築を否定し、消費される建築、風のような建築を掲げた伊東豊雄氏。建築という概念の解体を試み、現代美術としての建築を志向した磯崎新氏。構成と構法に日本的なるものを感じさせつつきちんと国家を背負った丹下氏。古くは分離派建築会と佐野利器氏などの建築非芸術論派(?)構造派の関係(?)。反辰野、反西洋コピーを掲げ自我を獲得した建築家・後藤慶二氏・・・のように。

まさし駒生店で餃子を食べて(ここライスがあるんですけど・・・)、震災後2年を経てようやく開館にこぎつけた大谷資料館へ。震災直前からはそれほど大きな変化はなかったよう。でも、十数年前に比べて、手摺がしっかりしたとか、オブジェがおかれているとか、なによりも照明があかるくなってしまっている。もっと荒々しい場でよかった感じも。平日だというのに、たくさんの人が見学に来ていて静寂さも薄れているとこもある意味残念。青や赤や黄色の照明を入れることはしてほしくないな。驚いたのは、見学中、天内さんのすぐそばに上空から石が落ちてきて・・・。危うく大けがじゃん。これはチト驚き。

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で、事前連絡していた作新学院円形体育館(1952)へ。これは以前ブログでも取りあげたけど、Docomomo-104番に選定されたとても重要な現代建築。巴組鉄工所(現:巴コーポレーション)の創業者・野澤一郎氏が開発したダイヤモンドトラスを使用した体育館。なんと、あのフラードームの原型となっているとか。素人にもわかるような空間や仕掛けがあるわけでもない、とってもとっても地味なこの施設、いったい誰が拾って、docomomoに推薦したのか、それが不思議。ちなみに野澤氏は真岡氏出身。真岡の学校にもこのトラスが使用されているそう。いやいたそれにしてもあいかわらず人が多い作新学院、全盛期の半分とはいえ1学年1500人だとか。一方、連結でも500人以下ととても従業員の少ない東証一部上場名門会社の巴さん。

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それと日光真光教会(1914)を設計したガーディナーの弟子、神林敬吉氏による宇都宮聖ヨハネ教会(S7=1932年)へ。実は今まで全く見逃していた。神父さんにご説明していただき施設をくまなく見学。とっても保存状態が良い。半透明の窓ガラス、鉛による窓枠、鋳物の窓金物、さらにはラクダのなめし革による照明も当時のまま。RCの躯体に10cmほどの大谷石張り。内部は白く塗られ、上部は金物で補強された洋組に近い架構の下に装飾とも補強ともとれるアーチ材が添えられる。ここはプロテスタントの教会。祈りは個人に帰属し、厳かにそれぞれが行なうとのことだが、それゆえ権威主義的な雰囲気や華美なところがなく、西洋の田舎にある町の人たちの信仰を集めるような、なんともいえない素朴な暖かさがある教会に感じた。ある意味カトリックン松が峰と正反対。

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施設の中でもっとも古いのは現・幼稚園舎。ちと悲しい形で改修されているが、明45年頃のものだとか。窓のプロポーションだけでずいぶん印象も違う。ココ、宇都宮の建築スポットに認定!

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さらに、木々に覆われた藤本壮介氏の house before houseを上り下りして・・・。

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黄色い光に包まれる松が峰教会

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で、少し時間があったので、昨年竣工したKMCに突然お邪魔。(いつもすみません。)事前にココどうなっているかわかる?といってた内容は結局わからずだったよう。実は梁通し、連梁がキーワード。どこでもだれでもが理解し、再現可能な技術だけど、忘れてしまっている、または気づかないものを丁寧に拾った建築。

で、夜は珈琲だけじゃ・・・と言われ、でてきてしまった石の蔵によって私の事務所で40分ほどのプレ飲み会。とりあえず4人でワインを1本あける。

そして天内大樹さんのレクチャーは「建築と美と芸術~分離派建築会と現代~」と題されたもの。美とは、芸術とは、建築とは何か?を美学を納めた立場から解説。さらに博士論文となった分離派建築会とは何か?ということについてぴったり1時間で解説。いやいや・・・私でさえ3割方、名前さえ知らなかった方々の話。きっとみんな相当大変だったはず。飲みながらもひたすらメモをとり検索を行なっていた。詳しいレポはテープ起こしをしてからにしようと思うけど、とりあえずチェックするべき本は

芸術や美学の解説ででてきた
ヴァザーリ 画家・彫刻家・建築家列伝
スコット 人間主義の建築
アバークロンビー 芸術としての建築

で、芸術としての建築、芸術足らんとする意志、さらには他律的な存在を超えた自立的存在であることetc・・・。う〜ん、哲学や。

建築を理解するために以下の2冊を挙げ、天内さんは井上さん側とのコメント
上松祐二氏 建築美学の講義
井上充夫氏 建築美論の歩み

そして分離派建築会の理解の一助として
長谷川尭氏 神殿か獄舎か
山本学治氏 現代建築論 ほか
宮内嘉久氏 ジャーナリズム無頼

などなど・・・。

最後は、天内さんの指導教員、安西信一氏のモモクロの美学・・・(笑)

飲んで聞いていられるのは8割り方知っているような内容の時だけだな。芸術家は、あるものに異常な執着を示し、それを行なうことで心の安らぎを求める人。大正の日がないように歴史から取り残された妙な時代、大正時代。良いとは思わないけれど、その時の短期間に花咲いた妙な建築群であった分離派建築会に興味をいだき、哲学や美学分野に属しながら、論文テーマとしたとか。そのような簡単な枝葉しか思い出せず(涙) 今回はしっかりテープ起こしします。詳細レポはそれから。じゃないと書けん!!!

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