« 5月例会案内です | トップページ | 靴 »

2013年5月25日 (土)

湯島〜森山邸

週に1度のインプットの日。早起きして、まずは湯島。

開園と同時に重要文化財の岩﨑邸へ。文化財保護のため室内写真撮影禁止とのことだけど・・・写真を撮ると文化財って痛むの???江戸時代の写真をとると魂がとられると話を思い出す。

コンドルによる洋館部分は、なるほど植民地的というか、正統派輸入建築で、高い天井と飴色の木によるケーシング、ひらひらスカートの女性が降りてきそうな吹き抜けによる階段まわり。横長のバルコ二ーからはふんだんの緑が望める。オイルヒーターも各部屋に設けられ、最先端の設備を採用していたこともわかる。スイッチもかわいい。ただ、この形態やディテールがが日本の気候にあっているかはかなり疑問。
一方、和館部分は流石・・・。低く抑えられた開口部から覗く裏庭、とても深い庇、端正なプロポーション・・・。いやいや・・・大河吾十郎という名大工に、名棟梁に受け継がれた構成や寸法に絶句。もちろんこちらはコンドルは無関係。

Yiwasakiy Yiwasakiw

で、9時半の開館と同時に国立近現代建築資料館へ入館。宣伝はしていないのに、平日で200人弱、休日は400人弱の来場者。しかも、それぞれが熱心に鑑賞するとのこと。

この施設、改修に拠るものなんだけど、アプローチの処理、形の取り合いなど、とても丁寧に設計されている。建築家の監修や実施設計事務所が入らず、国交省の設計監理のようだが、とても良い作品だと思った。就活マニュアルの公務員インタビューは、市、県と重ねてきたので、この方々にインタビューをしたくなった。

Ken1 Ken2 Ken3

開館記念特別展示は「建築資料にみる東京オリンピック」。要は丹下健三氏の代々木オリンピックスタジアムの記録。青焼図面や現場写真、接合部のミニュチュアの展示の他、設備の井上宇一氏、構造の坪井善勝氏の功績にも注目しているし、それを担当だった神谷宏治氏、川口衛氏、尾島俊雄氏が当時を思い出した対談など・・・。実は現場監督も相当の能力を持った人で、一番苦労したのではないかと思える。だって、CADもコンピューターも無い時代、ややもすると電卓さえなく、計算尺で数値を導きだしていたのではないだろうか。そのような状態で、ある意味適当な手書きの図面からこの曲面を導き出し、誤差を吸収しつつ、形にできたのはとんでもないこと。就活マニュアルで、この話をお伺いするのも有りかもしれない。第一体育館は清水建設、第二体育館は大林組の施工。そういえば、先日行なわれた改修で、板金の割りが出せなかったとのお話も豊川さんからあったなあ。

で、もうひとつの展示は、新国立競技場の入選11作品。緑に包まれた作品がふたつ。どちら土に埋めてしまうためにモニュメンタリティという面で弱いから最優秀とならなかったのが想像される。伊東案のガラスで包んだヴォイドと客席の形状によって生まれたスクリーンが足下のレベルとしてはとても魅力的に感じた。一方、フラットで巨大な屋根が雨仕舞に一抹の不安を感じるし、すっきりした建築故、緑化建築同様モニュメンタリティが少々弱く感じてしまったかもしれない。木フレームと膜構造を使用し日本的なるものを想像させた梓設計、環境・設備をしっかり考慮し、合理性による屋根構造や機能性を丁寧に説明する山下設計。如何にも山下という真面目さがでている!そうそう、仙田満さんは、いつものように夢のあるかわいいデザイン。

国立競技場はやはりある種のモニュメンタリティが必要だと思うので、ザハ、SANAA案に絞られるのは解る。CGの段階ではザハに構造的合理性を見てしまうが、短期間での提案。それはいくらでも詰められよう。それよりも、足下に高低差を伴い人間のスケールで操作されているように見えたSANAA案のほうが良かったのではないかと個人的には感じた。終了後、警備員さんの声かけで、事務室によってパンフレットを2部いただく。

で、駿河台に移動。しか〜し、お目当ての堀口・神代展が終了してしまってた(涙)お洒落になったイメージがある明治大だけど、駿河台を歩く人々はそうでもない(謎笑)そして日大のバブル展示も終了していて・・・完全に無駄足。

Nichidai

気を取り直して、乃木坂へ。

まずは、ギャラリー間の「小屋へいこうよ(中村好文展)」。お客様は中高年。エントランス階に6つの小屋を並べ、その中に中村氏が魅かれた先人の小屋を写真やスケッチ、模型で展示。高村光太郎さんの高村山荘、猪谷六合雄さんのモバイルハウス、立原道造さんの風信子ハウス、コルビュジエの母の家、ソローのキャビン、堀江謙一さんのマーメイド号。

Nakam1_2

庭にはご自身の持ち物を運び込んだみ、Jパネルを構造体とする小屋を設置、2階はその小屋の建設経緯のほか、今までに設計した小屋の実例など。

Nakam3 Nakam4 Nakam5_2

建築なんて最小限の小屋で良いじゃん。あれこれ警戒して、重いディテールを背負わなくても良いじゃん。簡素に行こうよという印象を受けるもの。でも実際は、こだわりのディテールに、こだわりの材料を使用し、こだわりの道具を集めた贅沢な場所。(実はとても高額な坪単価だったりして(謎笑))

Nakamu5

原稿に手をつけてないのでなんとなく後ろめたく・・・エクスナレッジビルの近くを通らないようにして、新国立美術館へ。実ははじめて訪れる(苦笑)

Shinkoku Shinkoku2

設計は黒川紀章氏。エントランスはいつもの円錐形。バイト時代、所員が100以上の円錐スタディをさせられていて・・・「もう何が良いんだかわからなくなっちゃったよ」と言うくらい。とても単純に展示室を列ね、そのエントランスを中間領域とし、柱や逆円錐形の要素を挿入しただけなんだけど、実は、そのくらい現れる形にはこだわりがあるのではないか。ディテールはとてもシャープ。

時間が押しているので「カリフォルニアモダンデザイン1930-1965 モダンリヴィングの起源」だけを見学。お客様は若中年のお洒落な方々。グリッドになったレールに沿って、付属の可動パネルが、千鳥に、そして隙間をあけて配置されている。いくつかの溜まりを設けながら、グルっと大回り、そして内回り。パネル間から向こうの展示を見せることでより広がりと期待のもてる空間になっている。会場デザインは中村竜治さん。

その温暖な気候と革新的な風土、工場とデザイナーの近接により安価にデザインの優れた質の良いグッズを供給していたカリフォルニア。工場の海外シフトなど、時代の流れで、それも叶わなくなってしまったが、その豊かな日々の記録を留めた展覧会。そういえば、中流層の住宅モデルを提案させるはずだったアーツアンドアーキテクチャー社のケーススタディハウスよりも、アイクラホーム社の量産住宅が庶民の住宅需要を満たし、ケーススタディハウスは中の上〜上のものとなってしまったというお話も描かれていた。

そして代官山。いやいや、代官山の子って、「素材(←タレントの大久保さんが言う処の)」はたいしたことがないかもしれないけど、身のこなしがお洒落・・・。こんなとこで仕事をしたい。で、某建築家のご子息に展覧会のご挨拶。某氏がご存命の時に改修した室内は師の影響を垣間みる雰囲気。友人が「ここにくると眠くなる」と言うと笑っていたが、とても落ち着く場所。

お話のなかで「火山のふもとで」という本をお聞きしたのでチェック!なんでも某系譜に属する建築家達が隠喩で描かれているらしい。


で、締めは都内某所(←っていっても検索ででてしまう?)の森山邸。これは新建築住宅特集編集部の方のご案内によるもの。じっくり内部を拝見させていただき、森山さんのお話を聞き(これはここに書けません)・・・。最小限の操作が生み出すというか、構成の微妙なシフトによって生まれる空間の強弱を感じ・・・。

Moriyama

で、バーベキュー開始。途中から建築家の松島潤平さんも合流。就活マニュアルや、シャープという価値観への収束、東工大の論文、隈さんの作品、松島さんのやろうとしているフェイクを肯定的にとらえようとしているお話などなど。あっという間に22時。住民が会社から戻り、森山棟の周りに集いはじめるなか、埼玉県美のIさんとお先に失礼してきました。実際は白い無機質の箱なんだけど、自然と一体となった、なんとなく、日本らしさや侘び寂び感の気配を感じる場。白い壁の室内におかれたまばらな葉をもつ植物もとても似合っている。いやいや、これ西澤さんの作品だけど、やはり森山さんの作品でもある。それを実感。人間は環境によって、感覚も、暮らし方も変わる。あとは提案する根性と、受け入れる勇気?

ようやく、実施設計の光が見えた。あとは整合性を出す作業。「星はいろんな意味で流せれば・・・」とアドバイスを受けたけど、流せないから、皆が流してしまうような実務で大切なことを建築知識で発表できるわけだし、就活マニュアルが書けるんだし、コスト本や、業界ガイド、そしてPOHのノウハウ集兼作品集の話も進むわけで・・・。まあ仕方ないと思う今日この頃。

ちょうど文章が書き終わる今、ようやく雀の宮に到着。今日はケチって普通シート。でも蓮田から座れました。ラッキー。長文御免。

|

« 5月例会案内です | トップページ | 靴 »

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




トラックバック


この記事へのトラックバック一覧です: 湯島〜森山邸:

« 5月例会案内です | トップページ | 靴 »