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2012年3月

2012年3月29日 (木)

3.11 万葉集 復活の塔

またもや五十嵐さんから本を頂く。

彦坂尚嘉・五十嵐太郎・芳賀沼整さん編著「3.11万葉集 復活の塔」
震災後、芳賀沼さんが絡んだ本はこれで3冊。南相馬の集会所につくった塔、彦坂さんにより57577のリズムで彩色が施されている。おそらくこの塔の製作が出版のきっかけなのだろう。

はしがきによれば万葉集は半数が作者未詳の歌であり、無名の民衆と支配者である天皇・貴族が同列に詩人=表現者として扱われていた、すなわち「集団性」と「連帯性」これが日本文化の本質を示すと記され、それが本書の根底であると記されている。その意をくみ、発刊にあたり、宮内庁の許可を得、皇族の詩を掲載している。

俳句は、記名はされているものの、それがどんな方かという紹介はなく、読み人知らずの状態で掲載され、背景には彦坂さんの絵が差し込まれている。震災と原発の記憶を残すように多数の写真も添えられている。3人の寄稿もそれぞれの立場から、あの日、それ以降を振り返り興味深いもの。

あの日、海辺で震災にあい、津波に街が、自分の設計した住宅が流されるのを見ても、このような活動ができる芳賀沼さんの強さをあらためて感じ・・・。

冗談で最近口にすることなのだが、例えば雨が漏る、家が揺れるなどクレーム続きであっても、それこそ訴訟になってこじれても、それでもチャレンジをし続ける建築家でないと建築家としてやっていけないのではないか・・・と最近思ったりする。ちなみに建築家は離婚を経験している人も多い(苦笑)

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2012年3月28日 (水)

見学

宇都宮出身の篠崎弘之さん設計のHouseMを見せていただく。女性2人住まいを想定した小規模な住宅。大空間かつ正方形となるパブリックスペースを中央に配し、そこにプライベートスペースが斜めの屋根・天井勾配を持ちながら差し込む、総額ローコスト住宅。個室と個室の隙間から坪庭が覗き、ちいさなハイサイドライトから光が差し込むのでパブリックスペースは図面で想像する以上に明るく感じる。伊東さんの事務所出身者らしく、あたらしい形を創造しようとする意気込みを感じた小作品でした。

篠崎さんのサイトはこちら
http://www.shnzk.com/

個人的には屋根の納まりに相当の苦労があったのではないかと勝手に想像しつつ・・・それでもPOHで設計した一室住居TYHより200万円以上は高いんだ・・・と妙な感慨を覚えつつ・・・サラダバー食べ放題のガストステーキに入るや否や、全て忘れひたすら食べまくりました(笑)

第1回の勉強会は4月16日(月)夜に決まりました。乞参加!

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2012年3月27日 (火)

アイドルゼミ

K君が講師のアイドルゼミを聴講。AKBの影響か、ユニット化されたアイドル集団、地方を拠点とする集団、さらには地下アイドルと言われる小さな箱を中心とする集団、アイドルを研究してセルフプロデュースを行う自称アイドル集団などが紹介される。どうやらアイドル林立時代といっても良いよう。

終了後、追いコンへ。3次会の会場では、地方アイドル特集が放映されていた。とってもタイムリー。3時で解散、カプセルホテルに泊まり朝宇都宮へ戻る。あれほどガラガラだったカプセルホテルも8割方埋まってたし、またホテルが取りにくくなっている。定価という強気の設定もちらほら。東北大卒業式の影響なのか、それとも仙台復興バブルの再来なのか・・・。

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2012年3月26日 (月)

建築零年

五十嵐さんが最もレクチャーと文章が上手い建築家のひとりだと絶賛する鈴木了二さんの「建築零年」をようやく読む。

巻頭の「建築零年」については、建築をつくるにあたっての決意表明的なものを引用と言い換えによって書き進めているため、私の苦手とする文章なのだが、2章以降に登場する巨匠の建築に関する論考はとても興味深いもの。

ミースのバルセロナパビリオンを取り上げ、細部においては、そこに存在する二つの池を比べ、水と床・壁の処理の違いに注目し、おそらくミースはこう考えたのではないかという、おそらく独自の見解を示す。近代建築の壁と柱の関係、建築家の意識も1910年から現代まで一瞬で俯瞰する。

続くカーンの稿でも、カーンの生まれ、建築の歴史を俯瞰し、彼の建築が装飾を廃しながら古典に還るものと指摘したり、テラー二の稿では、建築のA級、B級を定義し、更にテラー二がファシズムに乗れる階級の建築家であったことへも言及する。

論文のように客観的な事実や分析に留めるのではなく、一歩踏み込み想像しつづける。正しい正しくないではなく、建築家らしい思考の跡が見える本でした。

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2012年3月25日 (日)

一瞬

2月中旬より悩み続けた図面をようやく見積もりに出し一段落。仙台でゼミや飲み会をこなし、確定申告を提出、建築士の定期講習も無事終了した。そろそろ書き貯めたブログもアップしようかと一息ついたのはほんの一瞬。いつもと同じ夜を迎えたはずだったのに、こんなことが起こるなんて。

その日から既に10日が経とうとしている。なぜと納得のいかなかった当初だが、近所の人のお話や、残されたものから、もしや、そしてなる程とということがわかり、少しほっとする。明日からは、日常に復帰します。

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2012年3月13日 (火)

黄表紙読書会2012年3月

S君が取りあげたのは、大槻洋二さんの「神戸・新開地の歓楽街空間の実態とその変容」。「新開地」の盛衰を繁華街地図や謄本、紳士録によって明らかにしたもの。いってみれば計画の歴史。手法論考ともとてもしっかりした都市史。

Yさんは認知言語学の研究者・沖本正憲さんの紀要「身体性から見た科学分野のメタファー」を取りあげる。流石文系の方、とても文章が読みやすく、そして楽しい。認知言語学って分野も初めて目にする。とても新鮮。でもいわゆる工学的論文ではない。話題になったのは、彼が拠点とする苫小牧にあったホテルビバリートムは直喩なのか隠喩なのか暗喩なのかということ。

初発表のE君は、ダルムシュタット芸術家村に関する論文。昭和56年の査読のものなので、翻訳が主となるもの。

私は引き続き作家論・意匠論。今回は奥佳弥さんの「G.Th.リートフェルトの初期バンガロー型住宅の意匠に関する研究」をとりあげる。急に決まった読書会だったのでアマゾンから届いた奥さんの「リートフェルトの建築」を読み込む事はできなかった。でも、シュレーダー邸(1927年)で飾りであった鉄骨が、ストーブ邸(1950年)では構造体として意味をもち革新性を見せる事や、色の採用法によって過去の作品をしのぐ明解な壁面構成が知覚されることが示されている。このような論文の場合、どこまでが一般に言われている事や、先攻の研究者が書いたことなのか、どのような新資料に基づき論を構成したのかなどを明確に示す必要がありそうだ。意匠論・作家論は難しい・・・。

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2012年3月 7日 (水)

1-2 finish

SDL2012 今年の卒業設計日本一決定戦はすごかった。100選に東北大生が9人(4人)、10選には4人(3人)、さらにワンツーフィニッシュも決めた。(括弧内は五十嵐研の学生)。10選に入ったのは鈴木茜いらい4年ぶり。

震災に絡んだモノが残った印象もあるが、実は学生の意識はいろいろな方向に向いていた。違う方向に向きながらもそれぞれとてもレベルの高い次元に到達していることが今年度の東北大卒業設計の特徴。前期は学校が居場所がなかったため論文+設計でなく、設計のみの学生も多かったのことも多少の影響はあったかもしれない。

10年ちょっと前の東北大はデザイン教育で注目されることはなかった。仙台自体もそのような地域ではなかった。10年間進めてきた事が、結果となって現れてきた、そして震災が学生の目を覚まさせたのかもしれない。

成功の実例を目の前で見ている感覚。いやはや・・・。

http://gakuseikaigi.com/nihon1/12/index.html

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house publishing

今年度M4にて修士を修了した藤村くんのサイト。プレゼンのせいかその活動がうまく伝わらず、「最優秀修士設計賞」は逃すが、あきらかに「最優秀修士」であったとは思う。彼の活動記録のまとめとなったこのブログを見てあらためて感心してしまった。器用に手が動き活動力があるから、このような活動ができたのだけど、器用に表現してしまうから、極限の状態の活動が伝わらなかった感も。タイトル段ボールの質感や光の変化、挿入されたイラストも上手いなあ。最近、すごい人たちの活動が身近で目にするようになったためか、自分のパワー不足、能力不足を実感中。

http://d.hatena.ne.jp/housepublishing/

Housepub

 

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2012年3月 5日 (月)

河童が覗いたインド

相原コージ氏の「神々の見えざる・・」を見て、思い出したのがこの本。「これ面白い」と20年前大学の研究室で噂になっていた。「ここまでヤルのか」と書評などで書かれているが、いまとなってはそう珍しいとか、好奇心が過大だということを感じることもない。その経験よりも、緻密なスケッチが印象に残る本だった。インド人がyesは首を横に振り、noは縦に振るとの話はこの本で知ったのだが、さて本当にそうなのかはいまだに疑問。

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2012年3月 4日 (日)

七十二時間、集中しなさい。

建築家・丹下健三氏のご子息・憲孝さんが描かれた丹下氏のエピソード集。とても平易に書かれています。

「美しきもののみ機能的である」と言った丹下氏らしく、女性観も強烈だったとのこと。「女は美人でなければならない。気立てなど問題ではない。女の気立てなどは男がつくるものだから」と・・・。斉藤和義さんの「君の顏が好きだ」と共通の概念(笑)

そのほか、父は潔癖性だった。一歩外に出る時はスーツ、セーターは白、お金を触る事を嫌がる。お金を触った後は必ず手を洗う。特に海外ではお金を掴むさいには直に触らず、ティッシュを使うとのことなどなど・・・。

大建築家・丹下健三の素顔に迫り、微笑ましくさえ感じる本でした。

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